新入社員・若手社員を「Z世代」と一括りにしない方がよい理由

近年、メディアや企業内の会話で「Z世代」という言葉が頻繁に取り上げられるようになりました。一般には1990年代後半から2010年代前半に生まれた若い世代を指しますが、企業においては“デジタルネイティブでSNSを使いこなす”“個性を尊重されたい”などといった特徴が語られることも多いようです。一方で、新入社員や若手社員を一概にZ世代という枠にはめてしまうことは、組織にとって思わぬリスクや弊害をもたらす可能性があります。ここでは、その理由についていくつかの観点から解説します。

1. 個人差が大きい

Z世代と呼ばれる年齢層は共通点もありますが、それ以上に個人差が大きいのが実際のところです。たとえば、同じ「スマホネイティブ」と言われる年代でも、

  • SNSの利用頻度やその目的
    趣味の情報収集をメインにSNSを使う人がいる一方、ビジネス向けSNSや自己啓発に活用する人もいます。
  • 家族構成・学歴・地域差
    都市部で生まれ育った人と地方出身の人では、学生時代の経験や価値観に大きな違いがある場合があります。

世代論を当てはめようとしても、同世代の中ですら価値観や行動原理が全く異なることは珍しくありません。ラベルづけが先行すると、「Z世代はこういうもの」と決めつけてしまい、結果的に個々の良さや強みを見落とすリスクが高まります。


2. 先入観によるコミュニケーション・ギャップを生む

「Z世代はスマホに慣れ親しんでいる」「Z世代はドライだ」などのステレオタイプを持ったまま相手と接すると、どうしてもその先入観が言動に影響します。若手社員側としては、自分が持っていない特性を勝手に当てはめられたり、“Z世代らしいよね”と雑にまとめられたりすると、疎外感を覚える可能性があります。

また、“世代論を押し付けられている”と感じることで、若手社員が本来発揮できるコミュニケーションや主体性を損なうことも考えられます。その結果、上司や先輩社員が期待するよりもパフォーマンスが下がってしまうケースもあるでしょう。


3. 組織活性化のチャンスを逃す

企業組織にとって、新入社員や若手社員は重要な存在です。彼らはこれからの将来を担う存在であると同時に、組織に新しい価値観やエネルギーをもたらしてくれるからです。しかし、“Z世代”という括りで見ることで、

  • 無意識に「扱いにくい若手世代」という先入観を抱く
  • 新しいアイデアや意見を遠巻きに見てしまう

といった弊害が生じることがあります。若手が組織に新鮮な風を吹き込み、イノベーションのきっかけになるためには、彼らを固定的なイメージではなく、あくまで一人ひとりの個性として評価し、受け止める必要があります。


4. 効果的な育成・マネジメントの妨げになる

人を育て、成果を上げるには、「一人ひとりに合ったアプローチ」が不可欠です。たとえばある若手社員は、社内外の人と密にコミュニケーションをとりながら成長を実感したいタイプかもしれません。一方で、別の若手社員は特定の業務に深くのめり込むことで伸びるタイプかもしれません。

“Z世代はこう育てるべき”といった一般論や定型的なマネジメントを盲信すると、画一的な育成プログラムに終始してしまう可能性があります。それでは、さまざまな背景を持つ若手社員が本来の力を発揮しにくくなり、結果として組織全体の成長も阻害されかねません。


5. 組織の多様性を損なう恐れ

世代や国籍、性別などにかかわらず、多様な人材が活躍できる組織はイノベーション創出の可能性が高いとされています。ところが、新入社員や若手社員を一つの「Z世代」という括りでまとめてしまうと、「他の世代とは違う」「若手は若手同士、同じような考え方や行動をする」といった誤解が広がりやすくなります。

多様性を重視するのであれば、まずは組織内で個々人のバックグラウンドや思考様式を理解し合う風土を醸成することが大切です。世代の名札が目立ちすぎると、むしろ多様性を尊重する取り組みの障害になってしまうことがあります。


まとめ:一人ひとりの個性を尊重する姿勢が大切

確かに、「世代論」が全く意味を持たないわけではありません。共通する価値観や特徴を把握しておくことは、コミュニケーション上の手がかりになる場合もあります。しかし、それはあくまで“目安”の一つ。実際の人材育成やマネジメントの場面では、一人ひとりと向き合うことが何より大切です。

  • 目の前の若手社員が何を大切にしているのか
  • どんな環境で力を発揮できるのか
  • どのような目標やビジョンを持っているのか

こうした個別の要素を丁寧に把握したうえで、柔軟に指導や支援を行うことが、組織全体の活性化や持続的な成長につながります。

新入社員・若手社員を「Z世代」という一括りで見るのではなく、一人ひとりが持つ個性と意欲を尊重し、相互理解を深められる組織風土をつくっていきたいですね。そうすることで、若手社員は安心して成長でき、組織に新しい風を吹き込む大きな力ともなるでしょう。

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